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2025.10.16
【タンペレ サウナの聖地】フィンランド最古の公衆サウナ「ラヤポルティン・サウナ」徹底解説
サウナ愛好家にとって、一度は訪れるべき聖地がフィンランド中部にあります。
それが「世界のサウナ首都(Sauna Capital of the World)」として知られるタンペレです。
タンペレは2018年にこの称号を獲得しました。
その理由は、この地域が高品質なサウナ体験を提供していること、そしてフィンランド全土で最も多くの公衆サウナを有しているためです。
タンペレとその周辺地域では、一年を通じて約70もの公衆サウナが稼働しており、その多様なサウナのセレクションは専門家によって高品質であると認定されています。
この豊かなタンペレのサウナ文化の中でも、最も歴史と伝統を象徴する場所が、ピスパラ地区に静かに佇むラヤポルティン・サウナ(Rajaportin Sauna)です。

“ラジャポーティンサウナ pispala.jpg“byJuha Laaksoharju
–Wikimedia Commons,ライセンス:CC BY-SA 3.0,※トリミング・色調補正を加えています。
1.歴史と継承:フィンランド最古の公衆サウナ
ラヤポルティン・サウナは、フィンランド最古の現存する公衆サウナとして非常に重要な歴史的価値を持っています。
このサウナはタンペレのピスパラ地区で1906年に開業しました。
特筆すべきは、サウナの建物が開業当時とほとんど変わらない造りを今も維持している点です。
この区画の歴史は1900年代初頭に遡り、ヘルマンニ・ラハティネン氏と妻のマリアによって築かれました。
当初、敷地内には売店のある母屋、自家製パン屋の入った翼廊、やや低い屋根のコテージ、そしてサウナと洋裁所が建ち並ぶ複合施設でした。
現在、サウナはタンペレ市が所有していますが、その運営は1898年以降、ピスパラ・サウナ協会が担っています。
協会は、ロウリュを愛する人々がこの歴史的な空間を満喫し、さらに新しい世代やその先の世代が公衆サウナという文化に目を向け、これを受け継いでいくことを心から願っています。

“Rajaportin sisäänkäynti.jpg“byRajaportin sauna
–Wikimedia Commons,ライセンス:CC BY-SA 4.0,※トリミング・色調補正を加えています。

“Rajaportin kassa odottaa saunojia.jpg“byRajaportin sauna
–Wikimedia Commons,ライセンス:CC BY-SA 4.0,※トリミング・色調補正を加えています。
2.唯一無二のロウリュ体験:伝統的な薪焚きサウナの秘密
ラヤポルティン・サウナが提供する体験は、単なる熱い部屋でのリラックスを超越したものです。
ロウリュ(Löyly:熱せられた石に水をかけたときに噴き出す蒸気)の音を聞きながら、心地よい土の香り、森のような香りを吸い込む——これが、タンペレのフィンランドサウナの本質です。
ラヤポルティン・サウナのロウリュの質の高さは、その伝統的な薪焚きの構造にあります。
巨大なサウナストーブと持続的なロウリュ
サウナの心臓部で稼働しているのは、一度薪をくべたら一日中保熱が可能な、3立方メートルもの石造りの巨大なサウナストーブです。
営業日には、長さ1メートルの薪を何本も使い、重さ1トン以上にもなるサウナストーンが真っ赤になるまで温められます。
薪を焚いた後には、一酸化炭素中毒を防ぐために「ハカロウリュ」と呼ばれるプレ水かけが行われ、煙や灰を完全に取り除きます。
その後、風量調節用のレジスタを閉めて温度を一定に保ち、ストーブを冷まします。
この工程こそが、昼も夜も、絶えず芳しいロウリュが噴き出し続ける状態を生み出す秘密です。
このタイプのサウナの特性として、入浴の初めは鋭く乾いたロウリュですが、時間が経つにつれて次第に柔らかく潤ったロウリュへと変化していきます。
常に心地よいロウリュを浴び続けられるのは、このフィンランド最古のサウナならではの特別な体験です。
3.ラヤポルティン・サウナの利用方法と付帯サービス
ラヤポルティン・サウナは、ロウリュの質だけでなく、その社交的な雰囲気も魅力の一つです。
施設構造と混浴
サウナ室は仕切り壁で男女の空間が分かれていますが、サウナストーブとクールダウンのための庭は男女共用です。
さらに、通常の営業日とは別に、月に一度、男女混浴の日が設けられています(水着着用義務はありません)。
収容能力とルール
更衣室は男女ともに15〜20人まで収容可能であり、サウナベンチにはそれぞれ12人ほどが座れます。
サウナの平穏を守るため、携帯電話は更衣室で電源を切って置くように求められています。
貴重品は、管理人のいる窓口のボックスに預けることができます。
物販・レンタル
窓口では、飲料の購入、タオルや尻敷きのレンタルが可能です(支払いはカードのみ)。
伝統的施術(サウノッタヤ)
ラヤポルティン・サウナを含むタンペレ市内のいくつかのサウナでは、「サウノッタヤ(saunottaja)」と呼ばれる担当者による、伝統的なサウナ内施術(ウィスキング、セレモニー、マッサージなど)をオーダーすることができます。
必要であれば日本語通訳付きでのサービスも可能です。
カフェと貸し切り
2000年に協会によって庭の建物内に作られたラヤポルティ・カフェでは、リフレッシュのための空間を提供しています。
また、営業時間外や営業日以外には、仲間内で歴史的なロウリュを心ゆくまで堪能できる貸し切りサウナサービスも提供されています。
ラヤポルティン・サウナ(Rajaportin Sauna)は、タンペレのサウナキャピタルとしての地位を支える、生きた歴史博物館のような存在です。
このフィンランド最古のサウナで、本物のロウリュをぜひ体感してみてください。

–Wikimedia Commons,ライセンス:CC BY-SA 4.0,※トリミング・色調補正を加えています。
参考文献
ラヤポルティサウナ: Rajaportin sauna(2025年10月16日取得)
VISIT TAMPERE(2025年10月16日取得)